ファイン! ブログ

<< 2026年9月 >>
1
2
4
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30

記事カテゴリー

月間アーカイブ
2026-08-10 14:21:37
『家族信託』って何?認知症に備える不動産管理の新しい選択肢
「家族信託」という言葉を、最近見聞きすることが増えてきたという方も多いのではないでしょうか。
終活や相続対策の文脈でよく登場するこの制度、「成年後見制度と何が違うのか」「そもそも何のための制度なのか」と、いまひとつイメージが掴みにくいテーマでもあります。

今日は、家族信託の基本的な仕組みと、不動産との関係について整理してみたいと思います。

①家族信託とは何か

家族信託とは、ご本人が元気で判断能力があるうちに、財産の管理や処分を、信頼できる家族に託しておく仕組みのことです。

たとえば「実家の管理や、いざというときの売却は、長男に任せておきたい」という場合、家族信託の契約を結んでおくことで、ご本人の判断能力が低下した後も、あらかじめ決めておいた内容に沿って、家族がその不動産を管理・売却できるようになります。

②認知症になると不動産の扱いはどうなるか

なぜ、このような仕組みが必要とされるのでしょうか。それは、認知症などによって判断能力が低下すると、ご本人名義の不動産や預貯金が、事実上「動かせない」状態になってしまうからです。

不動産の売買契約は、法律行為として本人の意思確認が必要になります。
判断能力が低下した状態では、この意思確認ができないため、「実家を売却して介護施設の入居費用に充てたい」と考えても、ご本人以外の家族が代わりに手続きを進めることができません。
この状態は「資産凍結」と呼ばれ、家族が対応に苦慮するケースが少なくないのです。

③家族信託でできること

こうした資産凍結を避けるための選択肢として使われるのが、家族信託です。あらかじめ家族信託の契約を結んでおくことで、次のようなことが可能になります。

・ご本人の判断能力が低下した後も、契約時に決めた範囲内で、家族が不動産の管理や売却を行える

・認知症になった後の後見制度の利用と比べて、財産の使い道や管理方法を柔軟に決めておける

・二次相続以降、財産を誰にどう引き継ぐかまで、あらかじめ指定しておくことができる(受益者連続信託)

似た制度として「成年後見制度」がありますが、こちらは判断能力が低下した後に家庭裁判所を通じて後見人を選任する仕組みで、財産の使い道について裁判所の許可が必要になる場面も多く、比較的制約が大きい制度です。
家族信託は、判断能力があるうちに契約内容を柔軟に決めておける、という点が大きな違いになります。

④検討する際に知っておきたい注意点

家族信託は柔軟で便利な制度ですが、いくつか知っておきたい注意点もあります。

1. 判断能力があるうちにしか契約できない 家族信託は、あくまでご本人が契約内容を理解できる状態のときにしか結べません。認知症の診断を受けてからでは、原則として利用できなくなります。

2. 信頼できる家族の存在が前提になる 財産の管理を任せる家族(受託者)には、大きな責任が伴います。
任せられるだけの信頼関係がある家族がいることが、制度の前提になります。

3. 費用と専門家の関与が必要 契約書の作成や、不動産が絡む場合の登記手続きなど、司法書士・弁護士・税理士といった専門家の関与が必要になり、一定の費用もかかります。

4. 成年後見制度にしかできないこともある たとえば、判断能力を失った方が結んでしまった不利な契約を後から取り消す「取消権」は、成年後見制度にしかない機能です。
目的によっては、両方の制度を組み合わせて検討することもあります。

「早めに動けば選択肢が広がる」という制度である一方、「判断能力があるうちに」という条件があるからこそ、検討するタイミングが重要になる制度でもあります。

家族信託は、まだあまり知られていない制度ですが、実家の管理や将来の売却について、家族があらかじめ備えておける有効な選択肢のひとつです。
「うちには関係ない」と思わず、一度どんな制度かを知っておくことが、将来の安心につながると感じています。