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2026-08-20 17:17:23
親が認知症になったら実家は売れない?成年後見制度の基本
「親の判断能力が最近少し心配」「もし認知症になったら、実家はどうなるのだろう」

こうした不安を抱える方は少なくありません。
前回、認知症に備える選択肢として「家族信託」をご紹介しましたが、今日はもう一つの代表的な制度である「成年後見制度」について、基本を整理してみたいと思います。

①認知症になると不動産取引はどうなるか

まず押さえておきたいのは、判断能力が低下した状態では、不動産の売買契約を結ぶことができない、という点です。

不動産の売却は法律行為であり、本人が契約の内容を理解し、意思表示できることが前提になります。
認知症が進み、この意思確認ができない状態になると、たとえご家族であっても、本人に代わって不動産を売却することは、原則としてできなくなってしまいます。

「実家を売却して介護施設の費用に充てたい」「空き家のまま維持する負担が大きいので手放したい」——そう思っても、本人の意思確認ができなければ、話は前に進みません。
この状態を防ぐための制度が、成年後見制度です。

②成年後見制度の基本(法定後見・任意後見)

成年後見制度には、大きく分けて2つの種類があります。

法定後見制度 すでに判断能力が低下してしまった後に利用する制度です。
家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が「成年後見人」を選任します。
選任される後見人は、必ずしも家族とは限らず、司法書士や弁護士などの専門家が選ばれることもあります。

任意後見制度 まだ判断能力があるうちに、「将来判断能力が低下したときに、誰に後見人になってもらうか」を、本人があらかじめ契約で決めておく制度です。
判断能力が実際に低下した段階で、家庭裁判所に申し立てを行い、契約の効力が発生します。

どちらの制度も、後見人が選任されると、本人に代わって財産管理や契約行為を行えるようになります。
ただし、不動産、特に「本人が住んでいる、または住んでいた自宅」を売却する場合には、家庭裁判所の許可が別途必要になるなど、慎重な手続きが求められます。

③後見制度を利用する際の注意点

成年後見制度は、本人を保護するための手厚い制度である一方、いくつか知っておきたい注意点もあります。

1. 自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要 本人の生活の基盤である自宅を売却する場合、後見人の判断だけでは進められず、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
この手続きには一定の時間がかかることがあります。

2. 財産の使い道が制限される 成年後見制度は「本人の利益を守る」ことを目的としているため、家族のための支出(相続対策としての生前贈与など)には基本的に使えません。
この点は、柔軟に財産を動かしたい家族にとっては、制約に感じられることもあります。

3. 専門家が後見人になった場合は報酬が発生する 司法書士や弁護士などの専門家が後見人になった場合、その業務に対する報酬が、本人の財産から継続的に支払われることになります。
この負担は、本人が亡くなるまで続きます。

④判断能力があるうちにできること

「親が認知症になってから」では、選べる選択肢が限られてしまいます。
だからこそ、判断能力がまだしっかりしているうちに、次のようなことを考えておくことが大切です。

・将来、実家をどうしたいか(住み続ける・売却する・活用するなど)について、親と話しておく
・任意後見制度や、前回ご紹介した家族信託など、判断能力があるうちに準備できる制度について知っておく
・実家の名義や評価額など、基本的な情報を家族で共有しておく

成年後見制度も家族信託も、それぞれ得意な場面が異なります。
「うちの場合はどちらが向いているのか」を判断するためにも、まずはそれぞれの制度の特徴を知っておくことが第一歩になります。

親の判断能力の変化は、多くの場合、少しずつ、気づきにくい形で訪れます。
だからこそ、「まだ大丈夫」と思っているタイミングこそ、将来の備えを考える良い機会なのかもしれません。