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2026-08-10 14:21:37
「家族信託」という言葉を、最近見聞きすることが増えてきたという方も多いのではないでしょうか。
終活や相続対策の文脈でよく登場するこの制度、「成年後見制度と何が違うのか」「そもそも何のための制度なのか」と、いまひとつイメージが掴みにくいテーマでもあります。

今日は、家族信託の基本的な仕組みと、不動産との関係について整理してみたいと思います。

①家族信託とは何か

家族信託とは、ご本人が元気で判断能力があるうちに、財産の管理や処分を、信頼できる家族に託しておく仕組みのことです。

たとえば「実家の管理や、いざというときの売却は、長男に任せておきたい」という場合、家族信託の契約を結んでおくことで、ご本人の判断能力が低下した後も、あらかじめ決めておいた内容に沿って、家族がその不動産を管理・売却できるようになります。

②認知症になると不動産の扱いはどうなるか

なぜ、このような仕組みが必要とされるのでしょうか。それは、認知症などによって判断能力が低下すると、ご本人名義の不動産や預貯金が、事実上「動かせない」状態になってしまうからです。

不動産の売買契約は、法律行為として本人の意思確認が必要になります。
判断能力が低下した状態では、この意思確認ができないため、「実家を売却して介護施設の入居費用に充てたい」と考えても、ご本人以外の家族が代わりに手続きを進めることができません。
この状態は「資産凍結」と呼ばれ、家族が対応に苦慮するケースが少なくないのです。

③家族信託でできること

こうした資産凍結を避けるための選択肢として使われるのが、家族信託です。あらかじめ家族信託の契約を結んでおくことで、次のようなことが可能になります。

・ご本人の判断能力が低下した後も、契約時に決めた範囲内で、家族が不動産の管理や売却を行える

・認知症になった後の後見制度の利用と比べて、財産の使い道や管理方法を柔軟に決めておける

・二次相続以降、財産を誰にどう引き継ぐかまで、あらかじめ指定しておくことができる(受益者連続信託)

似た制度として「成年後見制度」がありますが、こちらは判断能力が低下した後に家庭裁判所を通じて後見人を選任する仕組みで、財産の使い道について裁判所の許可が必要になる場面も多く、比較的制約が大きい制度です。
家族信託は、判断能力があるうちに契約内容を柔軟に決めておける、という点が大きな違いになります。

④検討する際に知っておきたい注意点

家族信託は柔軟で便利な制度ですが、いくつか知っておきたい注意点もあります。

1. 判断能力があるうちにしか契約できない 家族信託は、あくまでご本人が契約内容を理解できる状態のときにしか結べません。認知症の診断を受けてからでは、原則として利用できなくなります。

2. 信頼できる家族の存在が前提になる 財産の管理を任せる家族(受託者)には、大きな責任が伴います。
任せられるだけの信頼関係がある家族がいることが、制度の前提になります。

3. 費用と専門家の関与が必要 契約書の作成や、不動産が絡む場合の登記手続きなど、司法書士・弁護士・税理士といった専門家の関与が必要になり、一定の費用もかかります。

4. 成年後見制度にしかできないこともある たとえば、判断能力を失った方が結んでしまった不利な契約を後から取り消す「取消権」は、成年後見制度にしかない機能です。
目的によっては、両方の制度を組み合わせて検討することもあります。

「早めに動けば選択肢が広がる」という制度である一方、「判断能力があるうちに」という条件があるからこそ、検討するタイミングが重要になる制度でもあります。

家族信託は、まだあまり知られていない制度ですが、実家の管理や将来の売却について、家族があらかじめ備えておける有効な選択肢のひとつです。
「うちには関係ない」と思わず、一度どんな制度かを知っておくことが、将来の安心につながると感じています。

2026-08-08 18:22:28
相続の話し合いがまとまらず、「とりあえず実家は兄弟で共有名義にしておこう」という結論になるケースは、実はとても多くあります。
一見、公平で角が立たない方法に思えるのですが、この「とりあえず共有」が、後になって思わぬ形で影響してくることがあります。

今日は、不動産の共有名義について、知っておきたいリスクと、その解消法について整理してみたいと思います。

①共有名義とは何か

共有名義とは、1つの不動産を複数の人が「持分」という割合で共同所有している状態のことです。
たとえば、実家を兄弟3人で相続した場合、それぞれが3分の1ずつの持分を持つ、といった形になります。

相続の場面では、「誰か一人に決めるのは気が引ける」「とりあえず平等にしておきたい」という理由から、深く検討せずに共有名義を選んでしまうことが少なくありません。
ただし、この共有という状態には、単独名義とは異なる特有の制約があります。

②共有名義でよく起きる問題

共有名義には、次のような問題が起きやすい傾向があります。

1. 売却するには全員の同意が必要 共有不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。
一人でも「まだ売りたくない」「もっと高く売れるはず」と考える人がいると、売却の話が進まなくなってしまいます。

2. 意思決定に時間がかかる リフォームや活用方法の変更など、不動産に関する意思決定のたびに、共有者全員の意見をすり合わせる必要があります。
人数が多いほど、また関係が疎遠であるほど、この調整に時間と手間がかかります。

3. さらに次の世代に権利が引き継がれていく 共有者の誰かが亡くなると、その持分はさらにその方の相続人に引き継がれます。
何世代も共有状態が続くと、共有者の人数がどんどん増え、収拾がつかなくなってしまうこともあります。
連絡先すら分からない共有者が出てくる、というケースも実際にあります。

4. 固定資産税などの負担割合でもめることがある 固定資産税の納税通知は、共有者の代表者一人に届くのが一般的です。
この立て替えた分を他の共有者からどう回収するかで、細かなトラブルが起きることもあります。

③共有状態を解消する主な方法

すでに共有名義になっている場合、その状態を解消する方法としては、主に次のようなものがあります。

・持分の売買・贈与:共有者の一人が、他の共有者の持分を買い取る、または贈与を受けることで、単独名義にする

・不動産全体を売却して現金で分ける:共有者全員の同意のもと不動産を売却し、代金を持分割合で分配する

・共有物分割請求:話し合いで解消できない場合、裁判所を通じて分割を求める手続き(最終手段として位置づけられることが多い)

どの方法を選ぶかは、共有者間の関係性や、それぞれの意向によって変わってきます。
特に「持分の買い取り」は、不動産の評価額の算出や資金の準備が必要になるため、専門家のサポートを受けながら進めるケースが多いです。

④共有名義にする前に考えておきたいこと

これから相続の話し合いを控えている方に向けて、共有名義を選ぶ前に考えておきたいことをお伝えします。

・将来、その不動産をどうしたいと考える人が多いか(住み続けたい・売りたい・分からない)

・共有者になる予定の人たちは、今後も連絡が取りやすい関係でいられそうか

・「とりあえず」で共有にした場合、将来どのタイミングで見直すつもりか

「とりあえず共有」という選択自体が悪いわけではありません。
ただ、それが将来どんな影響を持つ可能性があるかを知った上で選ぶのと、知らずに選んでしまうのとでは、大きな違いがあります。

すでに共有名義になっている実家をお持ちの方も、「今のままでいいのか」を一度見直してみることで、将来の選択肢を広げておくことができます。

共有名義は、相続の場面で選ばれやすい一方、後々の話し合いを難しくしてしまう可能性がある選択でもあります。
今すでに共有名義になっている方も、これから相続を控えている方も、一度立ち止まって考えてみる価値のあるテーマだと感じています。

2026-08-06 18:30:40
相続や終活について調べていると、「評価額」という言葉に何度も出会います。
ところがよく見てみると、「路線価」「固定資産税評価額」「実勢価格」など、似たような言葉がいくつも出てきて、結局どれを見ればいいのか分からなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。

今日は、この「評価額」という言葉の整理と、それぞれの違いについてお話ししてみたいと思います。

①『評価額』にもいろいろある

不動産の「評価額」や「価格」には、実は目的によって複数の種類があります。
代表的なものを挙げると、次のようになります。

・実勢価格:実際に市場で売買される際の価格
・路線価(相続税評価額):相続税や贈与税を計算する際に使われる評価額
・固定資産税評価額:固定資産税や都市計画税を計算する際に使われる評価額
・公示地価・基準地価:国や都道府県が公表する、土地取引の指標となる価格

同じ不動産であっても、「何のための評価額か」によって金額が異なる、というのがまず押さえておきたいポイントです。相続との関係で特によく登場するのが、「路線価」と「固定資産税評価額」の2つです。

②路線価とは何か

路線価とは、主に相続税や贈与税を計算する際に使われる、土地の評価額の基準です。
国税庁が毎年発表しており、道路(路線)に面する標準的な土地1平方メートルあたりの価格として示されます。

路線価は、一般的に実勢価格のおよそ8割程度の水準になるよう設定されているといわれています。
つまり、実際に売買されるであろう価格よりも、やや低めに算出される傾向がある、ということです。

路線価は、国税庁のウェブサイトで公表されている「路線価図」で確認することができ、誰でも無料で調べることができます。
ただし、実際の相続税評価額の算出には、土地の形状や周辺状況による補正など、専門的な調整が加わることも多いため、路線価の数字だけで正確な評価額が出せるわけではない、という点には注意が必要です。

③固定資産税評価額との違い

固定資産税評価額とは、毎年課される固定資産税や都市計画税を計算するために使われる評価額です。
市区町村(東京23区は都)が、3年に一度の頻度で見直しを行っています。

固定資産税評価額は、一般的に実勢価格のおよそ7割程度の水準になるよう設定されているといわれており、路線価よりもさらに低めに算出される傾向があります。

この固定資産税評価額は、毎年送られてくる「固定資産税・都市計画税納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認することができます。
普段何気なく見ている書類の中に、実は評価額に関する重要な情報が載っている、というのは意外と知られていないポイントかもしれません。

④自分の実家の評価額を調べる方法

「実家の評価額がどのくらいか、大まかにでも知りたい」という場合、まずは次のような方法から始めてみることができます。

・固定資産税の課税明細書を確認し、固定資産税評価額を確認する
・国税庁の路線価図で、実家周辺の路線価を確認する
・大まかな実勢価格の目安を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼してみる

課税明細書や路線価図は、ご自身でも比較的手軽に確認できる情報です。
まずはこうした身近な資料から、実家の評価額のイメージをつかんでみることをおすすめします。

一方で、相続税の申告に使う正確な評価額の算出や、実際に売却する際の適正価格の見極めには、税理士や不動産の専門家による、より詳細な確認が必要になります。
「大まかな目安を知る段階」と「正確な金額を確定させる段階」を分けて考えると、進めやすいかもしれません。

「評価額」という言葉は一つでも、その中身は目的によっていくつも種類があります。
まずはこの違いを知っておくだけでも、相続や終活に関する情報を読み解く際の理解が、ぐっと深まるはずです。

2026-08-03 14:29:00
相続税対策という言葉とセットでよく登場するのが「生前贈与」です。
「元気なうちに、少しずつ財産を渡しておく」という考え方自体は聞いたことがあっても、実際にどんな制度があり、不動産の場合はどう扱われるのか、詳しくはご存知ない方も多いのではないでしょうか。

今日は、生前贈与の基本的な仕組みと、不動産を贈与する際に知っておきたいポイントについて整理してみたいと思います。

①生前贈与とは何か

生前贈与とは、その名の通り、財産を持つ方が生きているうちに、家族などに財産を渡すことをいいます。
相続を待たずに早めに財産を渡すことで、将来の相続財産を計画的に減らしていく、という考え方です。

ただし、贈与にも「贈与税」という税金がかかる場合があります。
無計画に贈与を行うと、かえって税負担が増えてしまうこともあるため、制度の仕組みを理解した上で進めることが大切です。

②暦年贈与と相続時精算課税、2つの制度の違い

生前贈与の方法には、大きく分けて「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つがあります。

暦年贈与 1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかからず、申告も不要というシンプルな制度です。
長年、生前贈与の定番として使われてきました。

ただし近年の税制改正により、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算する「持ち戻し」というルールがあります。
この加算対象となる期間は、これまでの3年から段階的に延長されており、将来的には7年になる見込みです。
「早めに贈与を始めるほど、この持ち戻しの影響を受けにくくなる」というのは、押さえておきたいポイントです。

相続時精算課税制度 将来の相続時に、それまでの贈与分をまとめて精算する前提で、大きな金額をまとめて贈与できる制度です。
近年の改正で、この制度にも年間110万円の基礎控除が新設され、この基礎控除の範囲内であれば、相続財産への持ち戻しも不要になりました。
まとまった金額を早めに動かしたい場合の選択肢として、注目されています。

どちらの制度にもメリット・デメリットがあり、一度選択すると変更できない部分もあるため、ご自身の状況に合わせて慎重に検討することが大切です。

③不動産を生前贈与する際の注意点

現金の贈与と比べて、不動産の生前贈与には特有の注意点があります。

1. 評価額の算出が必要 不動産は現金のように金額がはっきりしていないため、贈与する際には評価額を算出する必要があります。この評価額をもとに贈与税額が計算されるため、思っていたより評価額が高く、税負担が大きくなるケースもあります。

2. 登録免許税・不動産取得税がかかる 不動産の名義を変更する際には、相続の場合とは税率が異なる登録免許税や、不動産取得税がかかります。現金の贈与にはない、不動産特有のコストとして知っておく必要があります。

3. 分けにくい財産であることに変わりはない 生前贈与をしたとしても、不動産という「分けにくい財産」であることに変わりはありません。特定の相続人に実家を生前贈与した場合、他の相続人との公平感について、事前に家族で話し合っておくことが望ましいでしょう。

④始める前にまず確認したいこと

生前贈与を検討する際、いきなり制度を選んで実行するのではなく、まずは次のような点を整理してみることをおすすめします。

・贈与を検討している財産は何か(現金か、不動産か)
・誰に、どのくらいのペースで贈与していきたいか
・家族全体で見たときに、不公平感が生まれないか

生前贈与は、早めに始めるほど選択肢が広がりやすい制度です。
「まだ早いかもしれない」と思うタイミングこそ、実は検討を始めるのに適していることも少なくありません。

具体的な制度の選択や、不動産の評価額の算出、税額のシミュレーションといった部分は、税理士など専門家に相談しながら進めるのが安心です。

生前贈与は、相続を「待つ」だけでなく「備える」ための選択肢のひとつです。
特に不動産が絡む場合は、現金の贈与とは異なる注意点があるため、早めに情報を集めておくことが、後悔のない選択につながると感じています。

2026-08-01 18:49:17
「相続税」という言葉を聞くと、なんとなく不安になる方は多いのではないでしょうか。
ニュースなどで大きな金額が話題になることもあり、「うちにもかかるのでは」と心配される方もいらっしゃいます。

しかし実際には、相続税はすべての相続に対してかかるわけではありません。
今日は、その判断の基準となる「基礎控除」という仕組みについて、やさしく整理してみたいと思います。

①相続税は『誰でもかかる』わけではない
相続税には、「ここまでの遺産であれば税金はかかりません」という非課税の枠が設けられています。
これを「基礎控除」と呼びます。

亡くなった方が残した遺産の総額が、この基礎控除の範囲内に収まっていれば、相続税はかかりません。
それどころか、原則として税務署への申告そのものも不要になります。つまり、「相続が発生した=相続税がかかる」ではなく、「遺産の総額が基礎控除を超えたときに、初めて相続税の対象になる」というのが正しい理解です。

②基礎控除額の計算方法
基礎控除額は、次のシンプルな計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、配偶者とお子さま2人が法定相続人になる場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。
つまり、この場合は遺産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかからないことになります。

ここで気をつけたいのは、この3,000万円という部分は法定相続人の人数に関わらず一律であり、法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ控除額が増えていく、という点です。
法定相続人が誰になるのかによって、この金額は変わってきます。

③不動産があると評価が複雑になる理由
「遺産の総額」というと、預貯金のように金額がはっきりしているものはイメージしやすいのですが、不動産が含まれる場合は少し事情が異なります。

不動産は、現金のように「そのままの金額」で評価されるわけではありません。
土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」といった、それぞれ異なる基準で評価額が算出されます。
多くの場合、これらの評価額は実際の売買価格(実勢価格)よりも低く算出される傾向がありますが、正確な金額を把握するには、こうした評価方法を踏まえた計算が必要になります。

「実家がある場合、遺産総額はいくらになるのか」という点は、不動産の評価という一手間が加わる分、預貯金だけのケースよりも少し複雑になりやすい、ということは知っておいて損はないポイントです。

④自分は対象になりそうか確認する方法
「うちは相続税がかかるのか、かからないのか」を大まかに把握するためには、次のようなステップで考えてみることをおすすめします。

1.法定相続人が何人になりそうかを確認する

2.上記の計算式で、ご自身のケースの基礎控除額を出してみる

3.預貯金、不動産、その他の財産を大まかにリストアップし、総額のイメージをつかんでみる

この段階では、正確な金額まで出す必要はありません。
まずは「基礎控除を大きく超えていそうか、それとも近い水準か」を把握するだけでも、今後の心構えが変わってきます。

なお、不動産の評価額を正確に算出したり、実際の申告が必要かどうかを判断したりする部分は、税理士など専門家の領域になります。
大まかな見当がついた段階で、専門家に相談してみるという流れがスムーズです。

相続税は、正しい知識を持っているかどうかで、不安の大きさが大きく変わってくるテーマです。
「うちは対象になるのか、ならないのか」——まずはこの基礎控除の仕組みを知ることから、始めてみてはいかがでしょうか。

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